20代に転職を重ねたのは、嫌なことから逃げるため。人生初の入社6年目を迎える会社で芽生えた“他人本位”という働き方
20代のときは明らかに尖っていました。
自分が苦手な人とはさっさと縁を切って、自分が合わないと思った職場はさっさと退職を決断して。
転職には一切の抵抗がなく、長く続いて3年ほどでした。
主語はいつだって“私が”。
人に親切なことをしたときには、「私が何かをしてあげたんだから、そのぶんお返ししてよ」なんて考えていました……(今思えば、本当におそろしい)。
何でも自分一人の力でできているって、心の奥底で思っていたんですよね。
そんな私も今は30代。結婚、出産、育児、そして職場の変化を経て、考え方が「自分主体」から「相手主体」に変わっていることを実感しています。
10代、20代の頃の自分には信じられない姿です(笑)。
すべては変化の受け入れ方次第。どんなに尖っても、歳を重ねても、自分は変われるし、成長できると思います。
【今回の社員】
株式会社インデス
営業サポート部 リーダー
中島 優
■「この職場で続けるのはもういいかな」と、すぐに退職を決断した20代
中学生の頃から英語と洋楽が大好きで、「英語をもっと学びたい」という思いから高校卒業後は語学の専門学校に進学しました。今でもよくポップスは聴いています。
漠然と海外にも憧れを持って、卒業後は旅行会社に入社しました。
ただ、イメージしていたような海外旅行の添乗ではなく、チケットの発券、ホテルへの送客リストの作成などの事務がメインでした。
思い描いていたキャリアとは違う。
自分の気持ちにも折り合いがつけられず、3年で退職を決断しました。
迷いはなかったですね。「合わないんだから仕方ない」と割り切って、気持ちは別の仕事に向けていました。
旅行業界は景気に左右されることを実感したので、次はもっと長く安定して働ける業界が良いなと考えて、建物の維持管理を手掛ける会社に入社しました。
仕事内容は、書類の作成が中心でした。見積書、清掃の報告書、貯水場清掃・消防設備点検の告知文、時には外国人居住者向けに英文で文書を作成したりと、英語が生かせる仕事もありました。
ですが、この会社は、半年で退職しました。
朝から晩まで働いて、毎日の残業と土日出勤は常態化。社内に管理監督者がおらずチームとしても機能できていませんでした。
勤務先が新しく立ち上がった事業所だったのも原因なのですが、不安が尽きないことに耐え切れなかったんです。
この時も迷いはありませんでした。
今思えば、自分から働きかけて変えられることもあったんですが、その努力をしようとも考えませんでした。
一方で、建物の維持管理という仕事自体に対してはやりきれなかったことへの悔いはあったので、次こそは長く勤めようと意気込んで、大手の不動産会社に入社しました。
そこではマンション住人の方々や協力会社との窓口としての連絡対応、見積書作成などを担当しました。
一言でいうと、とても雰囲気がよい職場でした。
自分の仕事が終われば帰るという文化ではなく、残業になりそうなメンバーがいれば皆でサポートして、皆で一緒に帰る。仕事終わりに野球観戦やビアガーデンに行ったり、休日には一緒に釣りに行くほど仲が良かったです。
職場の仲間と一緒にいるのが楽しかったのですが、結婚を機に引っ越すことになり、約3年で退職。その後は約2年間、出産と育児で仕事から離れることになりました。
■もう逃げたくない。私に必要なのは、他人と本気で向き合うことだ
子どもが保育園に通う年齢になった頃、また仕事をしたくてなって転職活動を始めました。
軸になったのはやはり建物の維持管理に関する仕事。前職の経験もありましたし、自然と惹かれるものがありました。
企業を探し、ご縁があって入社したのが、今のインデスでした。
正直言うと、最初のうちは、社員の皆さんのことを心から理解できていなかったと思います。
というのも、かつての自分の価値観とは全く異なる文化だからです。
建物維持管理の仕事は、漏水などお客様の生活に直結するトラブルがつきもの。なので、お客様から呼ばれて行くと、厳しい言葉を頂くことも少なくありません。
でも、インデスでは社内でちょっと弱音を吐くことはあっても、何が悪かったか、どうすれば良いかとか、お客様のために議論が起きるんです。
誰かのために働く。
“自分本位”で転職を続けてきた私とは正反対の“他人本位”という働き方です。
全く異なる価値観を前にまた転職か……という考えにはなりませんでした。
むしろ、自分も誰かのために一所懸命やってみようかなと思うようになっていきました。
躊躇なく転職を繰り返してきた自分でも不思議なんですが(苦笑)、今になって理由を考えてみると、子どもの存在も影響したのかもと思うんです。
育児は他の誰でもない、自分がやるしかない。
ただ、どんなに親切を働いたところで、見返りを求めても子どもは何もできませんよね。
無償の愛には、自分本位でなんていられないんです。子どもの存在が、尖っていた私の考えを、知らず知らずのうちに柔軟にしてくれたのかもしれません。
考え方が変わるなかで、次第に自分自身とも本音で向き合えるようになってきました。
そこで気づいたのは、20代の頃に根っこにあったのは「言われたことをやればいい」という甘えがあったということ。
お恥ずかしいことに、自分さえ良い職場環境が手に入って、自分さえ成長できればいい、というのが本音でした。
だから、自分に都合の悪いことは避けて、より良い場所を求めて転職を続けていたんです。
どうしたら目の前の課題を解決できるかと考えることさえ放棄した。平たく言えば「逃げ」です。
そんな本音と向き合えて、やっと覚悟が生まれました。
このまま逃げ続けるのは嫌だ。
逃げの転職を続けていても、何も得られませんし、自身の成長もありません。壁にぶつかった時こそ考えて、壁を乗り越えたときに新たな発見があって、成長も得られる。
現に、インデスの皆さんは、お客様のためを考えて、日々壁を乗り越えようと動き続けているんです。その姿を前にして、また逃げたらもう二度と自分を変えるチャンスはないかもしれない。
だったら、私もこの会社の一員として、誰かのために考えて行動していきたい。
30代で出会った新しい職場は、20代の私が見たらびっくりするほどの変化をもたらしていきました。
■「自分の正は誰かの悪」視野を常に広げてくれる職場で気づいた、相手を思いやる気持ち
実は、この会社に来て、人生で初めて入社6年目を迎えました。
入社当時は小さかった子どもも成長し、当初はパートだったのが、契約社員、正社員…と、子育ての状況によって、働き方も変えてきました。
営業事務という職種からは大きく変わりませんが、その枠にとらわれず色々な経験を積んで、今ではマネジメントを任せてもらっています。
部署の業務としては、お客様や協力会社からの連絡対応のボリュームが大きいです。でも、テンプレートを読むだけのコール部署にはしたくはありません。
自分が職種の枠にとらわれない経験をさせてもらったのと同様に、部下や後輩にも仕事をアレンジしてお客様との関わりに面白さを感じられるようにしたいと常々考えています。
職場環境の面でも、自分の経験を踏まえて、子育て中の方が働きやすいように、現在リモートワークの整備に取り組んでいます。
もっとも、私が経験したことが、メンバーにとって全て良いとは限りません。
仕事にも、人生にも答えがないからこそ、考えることが大切です。
私なりに模索して、一人ひとりに合ったチャレンジをしてもらうことで、メンバーや会社の成長につなげていきたいと考えています。
一方で、「他人本位」で考えたつもりのことが、時には相手のためにならないこともあります。
上司に言われた言葉が印象に残っています。
「自分の正義が、相手にとって悪であることもある」。
例えば、仕事がうまく進まない後輩に「やってあげるよ」と引き取ったら、目先では仕事が進んで良かったかもしれない。
でも、その後輩は仕事のやり方が分からないままで、成長が止まってしまう可能性もある。
とはいえ、放置し過ぎもよくない。じゃあどうすれば……悩ましい。
そうやって誰かを思って悩んで、考えることで視野が広がり、新しい経験値を積むことにもつながる。それが結果として自分の成長にもつながっていくと思っています。
■家庭環境や年齢の変化を経たからこそ、これからを楽しめる自分がいる
前向きに考えるようにしていても、仕事に家庭に落ち込むことはあります。
それでもまた前を向いて、毎日を過ごせるのは、結局誰かに支えてもらっているからなんですよね。
自分一人でできる仕事なんて無い。
10代、20代の自分がいかに慢心していたかを、今になって実感しています。
若いうちは、自分の考えを曲げることに抵抗を感じるかもしれません。実際、私はそうでした(笑)。
今だから言えますが、時間とともに考え方が変わったっていい。
意固地にならず、自分の変化を受け入れるのも、大切なんじゃないかなと。
もし今、自分が尖っている実感がありながら、引くに引けなくなっている方へ、私から言えることがあるとすれば、「急がずゆっくりでいい」ということでしょうか。
人はいつだって変わるし、自分次第でいくらでも変われると思います。
(終)
★おすすめ記事★