40代で初めて地元・福井県を出て転職した、“よそ者”にこそできる職場改善との向き合い方
「認めてほしい」「必要とされたい」──
口には出さなくても、誰だって自分のことを認めてほしいもの。
それは、誰しもが持っている承認欲求であり、会社で働く上でモチベーションの源泉でもあると思います。
そんな社員の思いに管理職として応えていくために。私が必要だと考えているのは、社員に持つ力を存分に発揮してもらうための仕組みの整備やお互いの仕事を理解し認め合う風土づくりです。
ただ、職場環境をより良くしていくには、それまでのやり方やルール、社員の意識を変えていくことだって必要で、簡単な道のりではありません。
改革を担うのが“転職者”なら、なおさら。
私は、43歳の時に管理職として、大阪のエネルギー会社に転職してきました。
エネルギー業界も初めてなばかりか、実はそれまではずっと地元・福井県でキャリアを積んできたので、県外に出るのも初めて。
業界にも土地柄にも詳しくない、いわば“よそ者”の転職者である私は今、会社の風土改革という大きなミッションと向き合っています。
新しい場所で、風土改革に取り組もうと思ったのは、いろんな人と関わり合う中で気づきを得て、成長してきた過去が私にもあるから。
きっかけ次第で、人も組織も、きっともっと成長できる。
【今回の社員】
ミライフ西日本株式会社
管理部 関西業務チーム
塩田 和子
専門学校卒業後、会計事務所に入社。様々なクライアントの経理をサポートし、計13年勤務したのち、建設会社に転職し、人事からブランディングまで幅広い業務を担当。2021年8月、ミライフ西日本に、支店業務全般を担う管理部に管理職として入社。現在は、転職者ならではの視点で関西支店の風土改革にも取り組んでいる。
■経営者の言葉から、立ち止まることを学んだ28歳の私
学生時代の自分を思い返すと、今の職場で管理職として仕事をしているなんて思ってもみませんでした。
福井県で生まれ育った私は、子どもの頃から内向的で、根っからのインドア派。
数字や書類をまとめることが得意だったので、事務職を目指して簿記を学ぶ専門学校に進学しました。
専門学校卒業後に入社したのは、福井県内の会計事務所です。
さまざまな業界の経営者の方がクライアントで、いろいろお話しさせていただきながら、税務相談のアドバイスなどを担当しました。
経理業務のプロとして仕事をする一方で、経営者の方々から私が教えていただくこともたくさんありました。
中でも、ある時、経営者の方から頂いて、今でも印象に残っている言葉が1つあります。
それまでの自分は、言ってしまえば“猪突猛進”(笑)。自分が思う正解に向かって一直線に物事を進めていたけれど、世の中にはもっとたくさんの考え方やそれぞれの状況があって、正解は一つではないのだと気付かされました。
そしてその方は、こう付け加えました。
落ち込んだり悩んだりした時こそ、過去を振り返ったり、先人に学んだりすることが、次の一歩を踏み出す力になる。
当時28歳の私に、その言葉はあまりにもストンと落ちてきて、ハッとしたのを今でも覚えています。
■「このままでいいのか?」自分への問いで、世界はもっと広げられる
あの言葉で、自分の考え方や仕事の進め方も大きく変わりました。
どんな仕事でも、1つのゴールや手法に固執せず、あらゆる手法を検討してやってみる。
いつしか、過程そのものを楽しめるようになり、キャリアが開けていったような気がしています。
その後、13年勤めた会計事務所を退職し、当時成長の真っ中にあった同じ県内の建設会社に転職しました。
経理担当としての採用でしたが、組織としての基礎がまだ整っていなかったので、管理部門全体の責任者となり、人事や採用、企業ブランディングに至るまで、幅広く経験させてもらいました。
一つひとつのエピソードを挙げていくとキリがないのですが(笑)、管理部門という組織を作り上げ、ある程度、機能するようになるまでには、10年という時間が掛かりました。
ゼロから組織をつくりあげた自負を感じながらも、ある時、ふと思ったんです。
「このままだと、自分も会社も思考停止してしまう」と。
今のやり方を続けることが、この会社にとって本当にいいことなんだろうか?
自分のキャリアを考えた時に、このままでいいんだろうか?
転職はずっと頭にありました。
そんな時、熱量の高い採用担当者と出会いました。それが、関西を中心にLPガスや電気の供給・販売を行うミライフ西日本の人事担当の方だったんです。
エネルギー業界は過渡期。次々と起きる変化の中でも、成長し続ける企業となるため、グループ全体で風土改革に取り組んでいる。大切なのは、社員一人ひとりの成長。その後押しするために、力強いリーダーが必要なんだと。
尻込みしている自分もいました。
会計事務所でさまざまな業界と関わってきましたが、エネルギー業界は初めて。
しかも、会社を変えていくというフェーズ。
自分の経験やスキルが本当に生かせるだろうか。挙げていけば不安は尽きません。
逆に、プラスに思えることはなんだろう?
福井県から出たこともない。初めての業界での仕事。
もっと外の世界を見てみてもいいんじゃないだろうか。経験がない世界でこそ得られることがあるかもしれない。
当時43歳。転職するのは、次が最後になる可能性だってあります。
であれば、全く新しい場所で得られる、自分の成長の伸びしろに賭けてみよう。
考えてみれば、今までだって最初から経験したことがある仕事なんて一つもありませんでした。
未経験のことも「まずはやってみて」と任せてもらっていくなかで、「こんなこともできるんだ!」と、自分の世界はどんどん広がっていきました。
だからこそ、もっと広げてみたい、新しい景色を見てみたい。
自分の成長を信じて、入社を決意しました。
■風土改革の第一歩は、本音で言い合える関係づくり
2021年夏、長年育った福井を出て、配属先の大阪へ。
ミライフ西日本 関西支店の業務チームに管理職として着任しました。大阪、京都、兵庫エリアの業務全般を、一括で担うチームです。
配属された当初、率直に言ってしまうと、もったいないな、という印象を受けました。
一人ひとりの能力は高く、もっとできるはずなのに、仕事が属人的になっていたり、ルールの多さによって自由度が失われていたりと、個々のパフォーマンスが制限されてしまっている気がしたんです。
そこで私はあらためて確信しました。
業務チームの仕事は、与えられた業務をこなすだけに尽きるのだろうか?
──いや、違う。
支店全員が働きやすい“職場づくり”が業務チームの仕事の本質であり、今まで自分が他社で培ってきた視点を生かして、その実現を目指すことを私のミッションしよう、と。
やり方を変えることで、もっとワクワクしながら仕事ができるし、もっと自由にアイデアを出し合えるようになる。そうすれば、きっとそれぞれが今以上にパフォーマンスを発揮できるようになる。
そんな思いで、関西支店の風土改革に取り組み始めました。
とはいえ、入社してまだ2年。風土改革への道のりは始まったばかりです。
2年で取り組んできたのは、現場の声を聞いて現状を把握することと、本音で意見を言い合える関係をつくること。だって、頭ごなしで否定する人の言葉は誰も聞かないですからね。
なるべくいろんなエリアの店舗に出向き、店舗の方々に困っていることや店舗の状況を直接ヒアリングさせてもらいました。雑談から得られる気づきもあるので、とことん話を聞きました。
時には、支店の人が荷物を運んでいたら手伝ったり、業務に必要な道具類を使いやすいように片付けたりもします。
些細なことこそが、仕事をする上で欠かせない、「人と人との関係づくり」につながると考えているからです。
課題の把握と関係づくりに注力した2年間。明確な実績をつくれているかといったらそうではありませんが、少しずつ支店全体の意識が変わりつつあるように感じています。
例えば、これまではきっと“言ってもしょうがない”と言わずにいた、「この作業、どう思いますか?」「これが不便なので変えたくて」といった意見が、支店のメンバーから自発的に挙がるようになってきました。
新入社員に対しても同じです。
自分の都合で仕事を進めようとしていた新入社員に一番に伝えたのは、「仕事は人と人との関わりで成り立っている」ということ。
仕事の中で丁寧に伝えていくことで、新入社員から発せられる言葉も変わり、周囲からも「あの子は成長したね」と言ってもらえるようになりました。
■「自分は必要な存在なんだ」と実感できる環境にしたい
言ってしまえば、私、今でも変わらずネガティブ思考なんです。
良いところよりも、欠点を探してしまう。
でも、思うんです。欠点を探せる人にこそ、改革はできるって。
欠点は言い換えてみれば「改善点」。気づくほどに、職場を良くする方法を考えることもできるからです。
今は、見えてきた改善点を前に、経験をフル動員しながら、何をしていくべきかを考えている最中です。
もっといいチームにしていくためには、縦割りだけではなく横割りでも動ける組織としての柔軟さも必要ですし、裁量の中で自分なりにチャレンジできる風土としての自由さも欠かせない。
そんなふうに仕組みを変えていくには、他の企業を訪問して新しい知見を得ることも効果的かもしれません。比較対象があると、優れている部分も足りない部分も見えやすいですからね。
でも、当然、風土改革にも、人の成長にも終わりはないですし、正解もありません。
やり方はたくさんあって、一つのやり方に固執していてもいけない。
長く、難しい道のりだと思います。
それでもやっぱり、エゴかもしれないけど、「関わる人が幸せであってほしい」と思うんです。
「塩田さんがいてくれたから」
先日私が悩んでいた時、店舗の方が言ってくれたこの一言がすごく励みになりました。
その時ふと思ったのは、私が転職を考え始めたきっかけは「自分はこの会社に必要なのか?」という問いからだったなって。
きっと誰しも認められたいと思っていて、自分が価値を発揮しているという実感が、働くモチベーションにもなっているんだなと改めて実感しました。
だからこそ、もっとみんなが力を存分に発揮できる環境にしていきたいし、一人ひとりが「会社にとって自分は必要な存在なんだ」と実感できる環境にしていきたいんです。
よく友達から言われます、「肩肘張らずにやりなよ」って。
肩肘張っているつもりはないのに、結局肩肘張っている自分がいるんですよね。
いろんなやり方を考えて試して、少しずつ信頼関係ができていくのがうれしいし、何よりも私を頼ってくれる人がいる。
自分を頼りにしてくれる人のために尽くしたい。
一緒に働くメンバーのためにも、まずは自分が先陣を切って挑戦を続けていきたいと思っています。
(終)
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