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“研究一筋じゃない”研究職のキャリア。30代中盤から始めるマネジメントという選択肢

化学メーカーの研究職というと、白衣を着て、試験管をもって研究に勤しむといったイメージをお持ちではないでしょうか。

私自身も12年ほど、そのイメージ通りのキャリアを歩んできました。

気づけば30代中盤になりました。

研究職は、このまま研究一筋を貫く人がほとんどじゃないかと思います。

でも、私は最近になって、違う道に興味を持ち始めています。

それが、マネジメントとしてのキャリアです。

研究が嫌いになったわけではありません。

自分の“適性”を冷静に考えると、研究職のメンバーの力を引き出すことのほうが得意な気がして、関心も高まってきているんです。

「理系だから」「研究職だから」と言って、イメージ通りに研究一筋である必要はありません

まだまだ模索段階の私がいうのもなんですが、自分の適性はイメージや他人が決めるものではなく、自分自身で決めるものじゃないかなと思っています。

【今回の社員】

株式会社シナネンゼオミック
研究開発部
内田 純一

新卒で化学メーカーに入社し、洗濯用洗剤等の研究・開発に従事。その後、シナネンゼオミックに入社し、ゼオライトを活用した新製品開発に携わる傍ら、最近では営業サポートや特許取得などにも携わる。

■数年後にはベテラン勢が一気に退職!? ノウハウ吸収を急いだ新卒時代


大学ではプラスチック分析、大学院では化学物質の合成をテーマに、実験に夢中になっていました。

化学で世の中をよくしたい!」って本気で思っていましたね(今、口にすると少し照れ臭くもありますけど(笑))。なので、就活では化学メーカーの研究職を中心に選考を受けていました。

就活で一番思い出に残っているのが、ウェルカムボードがあった会社のことです。

1次面接で訪問したら、会社の入り口にウェルカムボードが立て掛けてあり、私の名前がバッチリ書かれていて驚きました。「なんて歓迎されてるんだ!」と。

実は、ここが新卒で入社した会社です。

1次面接からこんなに学生に気配りする社風や人柄の良さを感じ、そのまま入社を決めました。私の地元である福島県に近いというのも惹かれるポイントでした。

入社後は、志望どおり研究職に配属されました。

大学と大学院で研究した経験があっても、企業内での研究となれば勝手が異なります。

「しばらくは先輩に教わりながら慣れていくのかな」などと考えていたのですが、その職場は、数年後には退職をしてしまうベテランの方がほとんど

中間層がいない環境のため、ベテランの熟練したノウハウは、駆け出しの私たちの世代が受け継ぐほかありませんでした。

この研究をここで絶やしてはいけない」というプレッシャーは常にありましたが、こんなに学びに溢れる、恵まれた環境はまたとない成長のチャンスです。

必死にベテランの方々に食らいついていたのですが、入社からわずか半年後、突如として親会社への出向が決まりました。

そこでは親会社との共同プロジェクトに携わりました。

結局、入社してから約5年、新人でいる暇は一度もないくらい研究に没頭しました。

後輩が入ってきてからは教育にも力を注ぎました。年齢は関係なく、自分自身が中間層を担うんだという気概で仕事ができたと感じています。

ただ、その恵まれた状況は、突如として終わりを迎えることになります。

会社の業績が傾いたことから、新製品を開発できる環境ではなくなってしまったんです。

研究が大好きだったからこそ、この会社に居続けたいとは思えませんでした

開発に携われる職場を求め、転職活動をすることを決意しました。


■面接官同士が面接中に討論?衝撃的な選考から感じた現職の「人への思い」


初めての転職活動で出会ったのが、現職のシナネンゼオミックでした。

今でも思い出す衝撃的な出来事なのですが、1次面接のときに、私を置き去りにしたまま、目の前で人事と先輩研究職の方々による議論が始まったんです。

その内容というのが、会社の所在地である名古屋に、縁もゆかりもない私が引っ越してきて馴染めるかを心配してという(笑)。

私も大の大人ですし、当然ながら大丈夫と思っての応募だったのですが、長く働いてもらえるかという観点で長時間話し合ってくださる様子に「本当に人を大事にしている会社なんだな」と強く惹かれたのを覚えています。

シナネンゼオミックが開発する抗菌剤「ゼオミック®」にもさまざまな可能性があることも、一研究者として魅力に感じました。

入社が決まり、名古屋に引っ越ししてきて8年ほどが経ちます。

幸い、会社にも名古屋という土地にもなじめました(笑)。

入社して気づいたんですが、シナネンゼオミックは化学メーカーでありながら、化学メーカーからの転職者が意外と少ないんです。

バックボーンは多種多様で、飲食店や商社の出身の方もいれば、元ダーツのプロ選手なんて方もいて。

自分が育ってきた環境と違うからこそ、価値観や経験則も異なるので、社内からの刺激や学びは、入社から今まで尽きることはありませんね。


■新製品開発の可能性は1/100未満。プレッシャーのかかる研究だからこそ、雑談や「勢い」を忘れない


研究の仕事に就いて12年ほどになりますが、振返ってみると、「これは自分が開発した」と胸を張って言えるものって、実は数えるくらいしかありません。

直近ではもう2年前です。

研究と言う仕事は、どんなに時間や労力を費やしても、世に出るモノになるかどうかは、誰にも保証できません。

開発の途中で、想定していた効果が出なかったり、コスト面で採算が合わないといった理由から製品化を断念することも、当たり前のように起きます。

100件の開発をして、1つが製品化に成功するかどうか、なんて言われるほどです。

化学業界に限らず、どんな業界でも、競合に勝てる製品を生み出すという厳しい壁を乗り越えるために努力しているんですから、簡単に上手くいくものではありません。

だから、「何かを生み出さなければならない」という、成果へのプレッシャーと戦い続ける研究職も少なくないと思います。

……なんて、偉そうに言っていますが、私もプレッシャーは感じます(苦笑)。

“会社から言われるから”ではなくて、研究職である以上、なにかを生み出すことが自分の存在意義だと思うからです。

そういう意味では、研究職はいつだって逆境に立たされています。

それでも不安や葛藤を抱えながらチャレンジを続け、いつか乗り越えたときに得られる達成感という、代えがたい醍醐味があるから頑張れるんです。

とことん向き合い続ける

ひたむきであり続けることが、逆境をはねのける唯一の方法だと思います。

悶々と考えることも大事ですが、やっぱり行動がなくては一歩前には進めません。

私のモットーは、「考え過ぎず、とりあえずチャレンジしよう」。

時には思い切って始めた方が楽になりますし、準備ができたら、あとは気持ち次第。

研究職にも、勢いは大切だと思っています。

 

■マネジメントという新しいキャリアも視野に。自分らしい研究職の在り方を実現したい。


実は今、研究職としての仕事以外にも、営業のサポートや特許取得といった業務にも携わっています。

後輩の指導やサポートを依頼される機会も多く、研究職ではありながら、教育系の仕事のボリュームも増えてきています

他の業務のボリュームが増えれば、研究の仕事に割ける時間・工数も減ってしまうんですが、不満はありません。

最近気づいたんですけど、どうやら人を育てることが得意で、自分自身も好きみたいなんですよね。

一般的に「研究職=研究に没頭」というイメージがあると思います。実際、私の知り合いも研究一筋のキャリアを歩む人がほとんどです。

でも、研究職にも、色んなキャリアの選択肢があります。

これまで研究に没頭できたからこそかもしれませんが、今、私はマネジメントという道の方が合っているのかも、と徐々に感じるようになってきています。

いち研究者として研究を続けるよりも、他のメンバーが生き生きと研究できる環境をつくるほうに意欲と興味がわいてきていて、自分の適性が見えてきたような感覚もあります。

研究・開発への熱い思いを持ったメンバーが増え、どんどん任せて活躍してもらいたいという気持ちが芽生えてきたのも要因かなと思います。

あとはやっぱり、かつての自分が、ベテランの皆さんに育ててもらったからこそ、今度は育てる側に立ちたいっていう思いもあるのかもしれません。

「ダイバーシティ」なんてよく言われますけど、一口に研究職と言っても、キャリアの歩み方は人それぞれ

まずは私の世代から、自分なりのキャリアを歩んでいくことで、これからを担う若い研究職の皆さんが自由なキャリアを選ぶための選択肢の1つになっていけばいいなと思っています。

(終)

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