やりたいことが見つからない…就活に“軸”がなかった私が新卒採用担当になった今、言えること
学生時代はやりたいこともなく、ずっと受け身のまま、“なんとなく”で進路を決めていました。
早いうちから、やりたいことが見つかる人への羨ましさがありながらも、時間をかけて考えたから見つかるとも限りません。でも、進路も決めなければならない。
焦りや不安を感じながら、最後は「まぁ…なんとかなるか」と、楽観的で、少し諦めも入った決断で、実際何とかなってきていました。
そんな私が人事の仕事に出会ったのは、社会人になって4年目の時でした。
私はこういう仕事がやりたい…!
心の底から湧き出るような感覚。このときに転職という決断ができたのは、初めて自分の意志が働いた証だと思います。
そこから、キャリアが一気に広がっていきました。人材派遣会社からITベンチャー、そして現職へ。
私は今、やりがいを感じながら働いています。
強く思うのは、自分のキャリアを、自分で主体的に選択して、自らの手で切り拓いていく面白さ。
受け身な学生時代を送っておいて何を言うかという感じもありますが(苦笑)、新卒採用担当になった今の私にだから、伝えられることもあるんじゃないかなと思っています。
【今回の社員】
シナネンホールディングス株式会社
人事総務部 人財開発チーム
塩谷 薫
大学を卒業後、セキュリティ関連の会社に入社。警備業務を5年経験したのち、人材派遣会社に転職、派遣コーディネーターとして求職者との面談や転職活動のサポートに従事。ITベンチャーにて人事業務全般を経験後、2023年5月、シネナンホールディングスにリファラル採用で入社。現在は、主に新卒採用と障がい者採用に携わっている。
■“なんとなく”で生きてきた私が、やりたいことを見つけた
学生時代は、正直あんまり自分がやりたいことがありませんでした。
流れに身を任せたような毎日を送り、大きな失敗も、挫折もしない。でも、強く何かに打ち込むような情熱もありませんでした。
そんな私の高校時代の思い出は、生徒会長をやったこと。
もちろん、立候補ではありません(笑)。1年生の時に先輩が声をかけてくれて、なんとなく生徒会に入ったのがきっかけでした。
その年に生徒会に入ったのが同学年で私だけだったので、そのまま持ち上がりで生徒会長をやることになったんです。
流されるままなった生徒会長でしたが、体育祭や文化祭の時には、学校全体を引っ張っていく役割を任されました。朝早くから夜遅くまで準備する日々は大変でしたが、何かをゼロから作っていくのがすごく楽しかったのを覚えています。
こんな感じで、自分から何かに打ち込みたいと思うことはなくても、いざ役割と責任を負えばちゃんとやるし、やりきる、そんなタイプでした。
大学は、法学部に進みました。
当時見ていた刑事ドラマに影響され、警察官ってかっこいいなと軽い気持ちで(笑)。
ただ、勉強に打ち込む大学生ではなく、飲食店のアルバイトを3つ掛け持ちして、サッカー部のマネージャーも務めて、というような学生生活だったので、公務員試験は全滅…。正直、強い思いがあったわけではなかったので、見透かされてしまったのかもしれません。
そこから就職活動を始め、内定をいただいたセキュリティ会社に入社することにしました。
その会社では、警備業務や受付業務を担当しました。商業施設やビルなどの入り口に制服を着て警備にあたる。人や街を守るという意味では、刑事ドラマに感化された学生時代の思いには近い仕事ではありました。
入社4年目に差し掛かるころ、私のキャリアを大きく影響を与える出来事がありました。
人事の方に声をかけてもらって、新卒採用の説明会で話すことになったんです。
仕事にも少しずつ慣れてきて、学生の皆さんとも年齢的にも近しい。社会人と学生、どちらの目線も分かる存在として、比較的、若手メンバーには声がかかりやすいイベントです。
ここで話してみて、急に楽しくなっちゃったんです(笑)
先輩社員の声として、仕事内容ややりがいを話して、目を輝かせる学生たちの進路や人生にも影響するかもしれないという責任感を覚えながらも、誰かに向かって何かを伝えることが、こんなに面白いんだって気づきました。
人事の仕事をしてみたい──。
何もやりたいことがなかった私に、初めて“やりたいこと”ができたんです。
■誰かの人生に、影響を与える。人事としてのやりがいを実感
未経験で人事の仕事に就くのは簡単ではありませんでした。
そんな中でご縁をいただけたのは、人材派遣の会社。いわゆる企業人事とは少し異なりますが、私は求職者の面談、入社後のフォローなどを担当しました。
実際にやってみて感じたのは、業態による難しさ。派遣という契約形態もあり、人の入れ替わりが多く、求職者との関係も途切れがちで、じっくりと相談に乗り切れなかったりするのがもどかしい日々でした。
もっと求職者に寄り添えて、入社後も活躍する姿を見続けられたら…。そんな気持ちから、改めて企業の人事を目指して転職活動を始めました。
ありがたいことに入社が決まったのが、ITベンチャーです。
社長直下で、採用面接や入社後の研修、SNS運用など、まさに自分が担当したかった人事に関する業務を幅広く経験させてもらいました。
結果的に6年間勤めたんですが、私にとっては結構ハードな思い出もあったり…(笑)。とはいえ、多くの場数を踏めたのも確かで、そのなかで、やっと人事の仕事のやりがいを実感できたのが大きかったです。
たとえば、面接の中で「塩谷さんだと何でも話してしまいます」と言ってもらったり、説明会後のアンケートで「興味を持ちました」「もっと知りたいです」と書いていただいたり。
学生の皆さんからしたら何気ないコメントかもしれないんですが、私にとっては重く、でも嬉しい言葉だったんですよね。
自分の仕事が、誰かの人生に影響を与えているかもしれない。
入社してくれるかどうかはさておき、私との出会いが、目の前の学生が良い選択をする手助けになっているのだとしたら、こんなに素晴らしい仕事はないと思えたんです。
人事のプロフェッショナルとして、さらに成長していきたいという思いが強くなる中、職場が横浜に移転することになりました。
それまでは自宅がある千葉県から片道2時間かけて通っていたのですが、在籍中に子供も産まれたこともあって、子育てしながら、その会社に勤め続けるのは難しいと思い、転職を考え始めました。
転職をするからには、前向きなキャリアアップをしたいと考えた結果、せっかくなら、より企業規模が大きな会社の人事に挑戦してみたいと思うようになりました。
ITベンチャー時代の同僚から現職のシナネンホールディングスに声を掛けてもらって、選考を受けることになったのは、そんな時です。
私にとっては、願ってもないチャンスでした。
■転職後すぐに立ち塞がった壁。学生に寄り添った採用活動へ
2023年5月に、シナネンホールディングスに入社し、人財開発チームに配属となりました。
主な担当業務は、新卒採用と障がい者採用。これまで採用業務には携わってきましたが、企業規模の違いもあり、インターンシップや早期選考など、初めて経験することも数多くありました。
そんな私が壁に直面したのは、入社して1ヶ月も経たない頃のこと。
その年の採用活動が終わりを迎えるタイミングで内定辞退が相次ぎ、採用活動をやり直さなければならなくなったんです。
2023年は、売り手市場という状況に加え、コロナ禍が明けて大手企業も積極的に採用活動を行っていたことが大きな理由だったと思います。
チームで改めて採用活動を実施したことで、結果的には新たな学生の方々との出会いがあって、入社いただけたのは良かったのですが、内定辞退という事実は心が痛かったですし、もう繰り返したくはないと心から思いました。
そこで次年度の採用活動にあたって私はある提案をしました。
「内定者フォロー施策の一新」です。
内定者フォローは、内定者全員をまとめて行うのが一般的ですが、入社の決め手や魅力に感じるポイントも人それぞれです。個人の思いを踏まえ、フォローのやり方も一人ひとりに合わせたものにしていく必要があると考えました。
たとえば、仕事内容に少しでも不安がありそうだったら、先輩社員数名との面談を設定する。福利厚生を重視しているようだったら、内定後に改めて人事から詳しく制度を説明する。1対1の面談だと緊張してしまう方には、グループ面談を設けたこともありました。
地味で地道ですけど(笑)、結果として、内定辞退はほとんど起きませんでした。
当社の新卒入社は、この数年は10名前後ですが、一人ひとりに合わせて対応していくにはマンパワーが必要ですし、採用活動も長期化するためスケジューリングも時間を要します。本音で話してもらうための関係構築も欠かせません。
それでもやり続けるのは、学生が納得して決断できることが一番大切だと思うから、です。
内定を承諾してくれた学生たちに理由を聞いてみると、「ここまで手厚くフォローしてくれた会社はなかった」という声もありました。
そう言っていただけるのは嬉しいんですが、私たち以上に、学生の皆さんのほうが絶対に大変だと思うんです。
人生で最初の就職という選択をする、という重大局面ですから。楽しみな気持ちもあれば、不安も感じていたり、そのバランスだって人それぞれです。
だったら、入社まで内定者一人ひとりと、とことん向き合い続けたほうが、お互いの不安や懸念も解消できますし、入社後に、のびのびと仕事に臨んでもらえるはずです。
やっぱりきちんと納得して、心を決めて会社に入ってもらうことを何より大切にしたいと、今は心から思っています。
■人事は、その人の人生に深く関わる仕事
やりたいことを見つけて、目標としていた企業の人事になって。毎日やりがいを実感しながら仕事ができている自分は恵まれていると感じています。
学生時代のことを棚に上げて何を言うか!という感じですが(笑)、私の実体験から伝えらえるのは、自分がやりたいことが見つかるのは、社会人になってからでも決して遅くない、ということです。
私も就職活動のときに、ちゃんと自分の目標が決まっていて、就職活動もスムーズに進む人を見て、羨ましさを感じたこともありました。
でも、人にはそれぞれ自分のペースがあります。何気なく毎日を過ごしているつもりが、突然トリガーが出てきて、目標に向かって突き進むなんてこともあるんです。実際、これが私のペースだったんだと思います。
人事という仕事に出会えたのも、元をたどれば、受け身だった学生時代の自分がいて、警備会社に入社したのがきっかけだったりしますから。
会社に入る、というのは大きな転機になり得ます。
どの会社に入るかで、出会う人も変わって、人生も変わっていく。
採用活動は、その人の人生に深く関わる仕事だと思うんです。
だからこそ、少しでも目の前の学生の力になりたい。
何なら、最終的に選ばれるのがうちの会社じゃなくたっていいとも思っています。断られたとしても、「納得して決められたなら良かったね。いつかまたうちの会社とご縁があったらよろしくね!」って(笑)。
大事な意思決定に深く関わる以上、いつだって誠実に、最善を尽くしたいって思っています。
何が最善か、というのも採用活動だと毎年のように変わります。学生の傾向や経済環境によっても変わるので、昨年うまくいった内定者フォローが今年もうまくいくとは限りません。
それは、学生の皆さんにとって何をするのが一番力になれるのか、常に考え続けなくてはならないということでもあります。
人事の仕事は、常に挑戦し続けなくちゃいけないんです。
ちなみに、私の夢は、75歳まで働くこと! バリバリ働いて元気に生きている母の背中に憧れているのもありますが、何と言っても、自分のキャリアを自分の手で切り拓いていく面白さを感じているからです。
もしかしたら生涯人事担当なんていうこともあるかもしれませんし、いつかまた全く別の職種になっている、なんてことも…今のところまずないと思いますが(笑)
転機はいつ、どのようにやって来るか分かりません。
学生の皆さんに、人事担当との出会いが転機になりました、と言っていただけるような自分になれたら、人事担当として嬉しい限りです。
(終)
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