仕事でモテるコツは“暇そうにしていること”。ベンチャー・老舗企業で気づいた、面白い仕事との出会い方
面白い案件が回ってこない。ルーティンワークだからしょうがない…。
仕事がつまらない理由を考えれば、キリがありません。
私はこれまで、個人事業主としてスパゲッティ屋の経営に携わったり、
設立間もないベンチャー企業で経理を担当したり、
老舗企業で新規事業に関わったりと、さまざまな仕事を経験してきました。
キャリアを振り返って思うのは、楽しい仕事や成長の機会に本当に恵まれたな、ということ。
ただ、こうも思うんです。
待っていただけじゃないなって。
チャンスを引き寄せるため、自分なりに努力をしてきました。
いつでも仕事を振ってもらえるように忙しいそぶりは見せない。声を掛けてもらったからには全力で取り組む。
ほんの少しのことかもしれませんが、周囲とのかかわり方、自分の見せ方を変えるだけで、仕事はもっと面白くできるはずです。
【今回の社員】
シナネンモビリティPLUS株式会社
管理部長
田中 伸明
大学卒業後の進路は、在学中にアルバイトをしていた飲食店のオーナー。2年間個人事業主として店舗経営を経験後、企業に就職する道を選択。中小企業を経て、2006年にベンチャー企業に転職し、経理としてのキャリアをスタート。2012年にシナネンホールディングスに入社後は、経理・財務・監査など幅広い部門を経験し、2021年にシナネンモビリティPLUSに異動。現在は、管理部長として組織運営に携わる。
■どんな時も、自問自答が新たな道を切り拓いてきた
子どもの頃は、あんまり好奇心もなく、おとなしい性格でした。
父が自営業で、歯科医をしていたので、自分も将来はその後を継ぐつもりで高校生までは過ごしていました。
ところが、歯科大学の受験の真っ只中に両親が離婚。自分が、母と弟の面倒を見ていかざるを得なくなりました。
莫大な学費がかかるので歯科大学への進学はとても無理。急きょ、文系に方向転換し、結局は経済学部を選びました。
入学できたところまでは良かったものの、突然、歯科医の道が断たれたこともあって、やりたいことなんて見つかりません。
何の気なしに始めた、個人経営のスパゲッティ屋でのアルバイトに明け暮れました。
その状況は就職活動に差し掛かる頃になっても変わらず、進路に悩んでいると、思わぬ話が舞い込んできます。
ちょうどアルバイト先のオーナーが病気になり、店をたたむという話が持ち上がったんです。
これだ!と直感した私は、オーナーに相談して、その店を譲り受けることにしました。
なんでかって、女性にモテると思ったんですよね(笑)。自分の店を持っているなんてかっこいいじゃないですか。
今考えれば、甘々なのはわかります。当時、親が自営業だったこともあってその背中を見ていたし、「なんとかなるだろう」って思っていたんですよね。
ただ、幸いなことに、20年近く続いていたお店をそのまま引き継いだので、常連さんも多く、特に苦労もありませんでした。
ただ、2年が過ぎた頃、ふと思ったんですよね。
“自分はこのままでいいんだろうか?”と。
大学の同級生たちは会社に就職して、組織の中で成長して、ボーナスももらって。
劣等感があったわけではないんです。ただ、一度、組織に所属して、ビジネスを経験してみてもいいんじゃないかって思ったんですよね。
結局、店をたたんで、就職活動を始めました。
しかし、当時は就職氷河期。会社員経験がなく、パソコンも触ったことがないような状態では、全く相手にされません。
自分の強みは店舗経営の経験だったので、これを活かして経理部門を目指そうと、就職活動と並行して簿記の勉強と、派遣でデータ入力の仕事もしたりしました。
それで、やっとの思いで、家族経営の小さな会社に、経理担当として拾っていただきました。
結果から言うと、この会社も1年で辞めることになります。
会社の規模が小さいぶん、経理としてできる仕事の規模も小さかったんです。
期末はともかく、普段は単純な計算をする程度。
ある意味、ホワイト企業ではあったんですが、自分が欲しかったのは経理の実務経験です。
就職はできたけど、このままじゃ何も成長できない。経理としてのスタンダードを学ぶには、やっぱり上場企業に行くしかない。
在籍期間は短かったものの、迷いなく転職活動を始めました。
■経理の枠を越えてビジネスと向き合った、ベンチャー企業での経験
運良く採用していただいたのは、創業数年で、成長真っ只中にあったITベンチャーでした。
昨日の話が今日には変わる、めまぐるしいスピード感のなか、業務経験はほとんどないにもかかわらず、どんどん仕事を任されて、経理として一気に鍛えられました。
その会社は、経理部門と事業部門の連携を強化する方針だったため、デスクも並べて、密にコミュニケーションをとりながら業務ができたのも良かったです。
近くにいることで、事業を深く理解でき、現場目線で物事を捉えられるようになりましたね。
そんなふうに事業に入り込みながら経理に携わる中で、ある気づきがありました。
“経理がゴールじゃないよな”って。
経理にまつわる知識はあくまでビジネスに必要な要素の一つにすぎなくて、その知識を活かしてやるビジネスこそが面白いんじゃないか。
そう気づいてからは、自分なりの視点で、事業部門に対して新たなビジネスの企画を提案することもありました。
どんな立場であっても意見を自由に言い合える環境だったからこそ、自分の業務の枠を越えてビジネスや仕事に向き合えた。この時の経験が、今にも続く自分の仕事観につながっています。
仕事が楽しくて、のめり込む一方、帰り時間が遅いことも当たり前になっていましたが、転機となることがありました。
30歳を過ぎて結婚することになったんです。
仕事には全く余裕がなく、このままでは家族と一緒に過ごす時間がつくれないのは明らか……。
ワークライフバランスを意識したのは、このときが初めてでした。
ふと周りを見渡せば40~50代の社員はほとんどおらず、活躍しているのは仕事に没頭する20~30代。
仕事と家庭を両立できるか自信が持てず、転職を考えるようになりました。
このとき、軸として考えたのは「老舗企業」。
ベンチャー企業で多くの経験を積んできたからこそ、今度は規模も、業種も、異なる企業で仕事をすることで、もっと成長できるんじゃないかって考えたんです。
そんな思いから、転職先を探す中で出会ったのがシナネン(現・シナネンホールディングス)でした。
創業10年も満たなかったベンチャー企業にいた身としては、シナネンが1927年創業と知って、ギャップを感じずにはいられませんでしたけど(笑)、不思議と不安はなかったですね。
このときにはもう、ベンチャー企業で長年揉まれてきた経験と自信がありましたから。
■“絶対にこうした方がいい” その確信がビジネスを成長させた
入社して7年ほどは、財務業務を中心に、経理や監査なども経験しました。
前職と同じような職種で仕事は続いていましたが、キャリアがガラッと変わる異動を経験します。
シナネンモビリティPLUSという事業会社に行くことになったんです。
シェアサイクルサービス「ダイチャリ」を運営する事業会社として設立され、グループの新規事業として大きな期待を背負っていました。
経理だけでなく、管理部長として管理部門の責任者となった私に課せられたミッションは、自社の黒字化。当時はまだ投資段階だったので、早急な黒字化が至上命題でした。
グループにとって重要なビジネスかを知っていたからこそ、プレッシャーはありました。
収益管理のための数字を追いかけるのはもちろんですが、それだけでは足りません。事業を大きく拡大しなければならないフェーズで、昨日と同じことを続けているだけではなく、常に新しいアイデアが必要です。
今の自社に何が必要なのか。
成長スピードが求められる新規事業において、自分の業務の枠にとらわれず、自社にとって必要な提案をする大切さは、前職でも実感したことです。
毎日考えるなかで、力をいれたのは、自転車のメンテナンスの効率化でした。
ステーション(自転車を置く場所)数も、管理する自転車数も右肩上がりで増え続ける中、意外と負担になっていたのが、自転車のメンテナンスです。
自転車が故障すると、逐一、現場に社員が行って修理していたのですが、これでは効率が悪い。安心して自転車を使っていただくためにも、メンテナンス専用の拠点が必要だと思ったんです。
ただ、新たな拠点を設けるとなると、新たな固定費が毎月かかることになります。
黒字化を目指すこのタイミングで本当にやるべきなのか。
現場の声も聞きながら、毎日、自問自答しました。寝る直前まで、頭をよぎるくらいです。
最終的には「絶対に必要だ」という確信が背中を押しました。
結果的に、この整備拠点が事業を大きく成長させるために欠かせない存在になりました。メンテナンス効率が、目に見えて上がったんです。
配属当初は管理部門の仕事は、総務や経理、財務といった管理部門の業務がメインなはずで、自転車の運営管理といった事業部門的な仕事はサブくらいのイメージでいました。
それでも自分ごととして注力したのは、会社を大きくしていくためだし、その方が絶対にいいと思ったから。
この信念こそが、目の前の仕事を面白くしていくために欠かせない要素だと思っています。
■もらった仕事を、自分の手で“面白い仕事”に変えていく
私、不思議と声を掛けてもらうことが多いんです。
Aさん「こんな案件あるんだけど、手伝ってくれる?」
私「おぉ~いいけど」
Aさん「良かった!なんか手伝ってくれそうな気がして」
みたいな感じで、気づくと色々な案件にアサインされるんです。
たぶん、暇そうに見えるんでしょうね(笑)
「あいつなら、手が空いてそうだし、ちょっと相談してみるか」と。
一応断っておくと、もちろん、年がら年中、暇なわけないんですよ 。
ただ、前職で全く余裕がなかった頃からそうなんですけど、他人には“余裕がある風”に見せるようにしてるんですよね。
だって、忙しそうにしていたら声もかけにくいじゃないですか。
いつも涼しい顔で暇なふりをして、相談を受けたら「何でもやりますよ」って言う。そして、アサインされたからには、自分の手で面白い仕事に変えていく。
そうやって、一つひとつの経験を糧にしようとはしてきました。
今、私も40代になりましたけど、これからも面白い仕事にはどんどん関わっていきたいと思っていますし、この年齢だろうと、やろうと思えばなんでもやれると信じています。
何なら、一度断念したスパゲッティ屋に、いつか再チャレンジしたいと本気で思っているくらいですからね。
今の私をそうやって前向きにさせてくれるのは、娘の存在があるからです。
娘が物心ついたときに「お父さん、すごい!」って思われたいなと。
結局、学生時代に「女性にモテたい!」と思っていた頃から、モチベーションの根本はそんなに変わっていないのかもしれません(笑)
でも、自分が仕事に対して、心の底からやる気になれることであれば、モチベーションなんて、何だっていいはずです。
普段の振る舞いはちょっとカッコつけて演じていても、本音の思いには正直に、ありたい自分であり続けることが、良い仕事、良い縁を手繰り寄せるコツなんじゃないかなと思っています。
(終)
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