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昭和的なキャリアは令和に合わない? 30年超、役職定年まで同じ会社に勤めた自分にできることを考えた

新卒で入社した企業に、定年まで勤める。

希望していなかった仕事でも、配属された場所で経験を積んでいく。

所属する会社に、愛着を持つ。

今となっては、こんな価値観は“昭和的”なのかもしれません。

私は、新卒で入社した企業に32年勤めました。

希望しない異動もありましたし、悩んだこともありましたが、その中で一生の仕事にも出会い、役職定年まで走り抜けました。

今の会社に入社したのは、55歳の時。

この年齢で初めての転職です。

全く違う文化に戸惑うこともありますが、自分が向き合う仕事と会社への“愛”が根本にはあるから、やりがいを感じています。

まさに“昭和的”な価値観ですよね(笑)。“浪花節”なんて言わたりもしますけど。

時代とともに価値観が変わりゆく中で、私のような古い世代の人間も変わらなくてはならない。

キャリアや働き方を自由に選べる時代に、自分に何ができるんだろうか。

最近になって思うのは、自身の経験を伝えること自体が、誰かのキャリア選択の助けになるかもしれない、ということです。


【今回の社員】

シナネンホールディングス株式会社
監査部 監査チーム
川島 雅巳 

大学卒業後、たばこや医薬品、加工食品などを扱う会社に入社。1年間営業所の事務員を経験したのち、法務、複数の事業部門で約15年間法務業務を担当。経営企画部を経て、2005年から17年間にわたり内部監査に従事。新卒入社から32年間同社で勤め上げ、役職定年後、2022年4月にシナネンホールディングスに入社。これまでの経験を活かして、内部監査を担当している。



■希望していなかった配属先で見つけたやりがい


私が就職活動をしていた当時は、バブル景気の影響で売り手市場の時代。

金融業界が人気を集める中、普段の生活で目にする機会が多い製品・サービスに携わりたいと思った私は、たばこや医薬品、加工食品などを扱う会社に入社しました。

最初に配属されたのは、1年後に統廃合することが決まっていた営業所

会社としては新入社員に営業事務を経験させたくて配属したのだと推測しますが、その拠点自体がなくなるため、異動になることは明らかでした。

まもなく1年が経つという頃、人事とのキャリア面談が設けられました。 

私からは、入社当初から持っていた「営業を経験した後、ゆくゆくは商品開発に携わりたい」というキャリアイメージを伝えたのですが、「他にやりたいことは?」と何度も聞かれて(笑)。

絞り出したのが、法務部門でした。

理由といっても、法学部出身というだけ。特段思い入れがあったわけではありません。

ところが、予定していた1年間の営業事務が終わると、本当に法務部門に異動となったんです。

聞いた直後は、戸惑いの気持ちがありました。面談のときに自分で言ったとはいえ、希望していた商品開発への道は遠のいたので。

でも、まずはやってみてから考えようと思って、異動を受け入れることにしました。

思い返すと、商品開発にものすごいこだわりがあったかと言うとそうでもなく、法務部門が絶対に嫌だという感覚もなかった、というのが正直なところです。

なぜかと考えると、そのときの自分が目に見えていた範囲で、一番分かりやすかった「営業⇒商品開発」というキャリアパスを、そのまま自分のキャリアビジョンと言っていただけかもしれないから。

良くも悪くも、強いこだわりなんてなかったんです。

後に、この選択が私の人生を大きく左右するとは、思いもしていませんでしたが。

法務の主な仕事は、法律相談、契約書の作成と確認作業。

現場からは離れましたが、より適した契約書にしたいという思いから、営業現場に話をたくさん聞きに行きました。

「こんな苦労があるのか」「こんなこともやっているんだ」と理解を深めていくのが面白くて。もちろん全て理解できるわけではありませんが、管理部門であっても、できるだけ営業現場の近くにいたいと思ったんです。

そうして法務関係の業務で年次をどんどん重ねるうちに、会社や仕事のことも少しずつわかってきました。

やってみて気づいたのは、営業でバリバリ数字を上げるよりも、誰かをサポートする役割の方が自分には合っているんじゃないかということ。

望まない異動から、自分の適性に気づき、仕事のやりがいまで感じられるなんて、運が良い話ではありますよね。

でも、あのとき、希望部署と違うと拒絶せず、法務に一歩踏み出す選択をしたからこそ気づけたことでもあります。

結果論的ではありますが、よほど嫌でないなら、まず試してみるほうがいいと心にとめた転機の一つでした。
  

■愛を持って意見する、阪神ファンみたいな存在に


結局10年ほど、法務を軸に幅広い仕事に携わって、そのあとは経営企画部に異動になりました。

これまた希望したわけではないのですが、まぁやってみようと。

当時は、全社的なワークフローの刷新や新システムの導入などを進めている真っ只中でした。

しかし私は、これまで見てきた実情からそのスピード感に現場がついてこられるとは思えず、上長には率直に反対意見をぶつけていました。

部としては積極的に進めようという空気のなか、水を差す格好になっている自分。

周囲からの冷ややかな目を感じました。自分が折れれば、それで済んだかもしれませんが、現場に寄り添うと決めた手前、そうはできません。

ただ、葛藤の中でだんだんと心も疲れてきてしまい、ついに、会社は私に異動を命じました。

やむを得ない判断なのは明らかでしたが、むしろこれもまた転機になりました。

異動した先は、監査部です。

担当することになったのは、主に「内部監査」。不正防止や業務効率化を目的として現場を回って調査・評価し、現場担当者への助言と本部への報告を行う仕事です。

監査部長としてグループ会社に出向した期間も含めて17年。

これだけ長く同じ仕事に就かせてもらえて、私自身も一生の仕事に出会えた実感がありました。

会社としても「あいつは監査に向いている」と判断していたんだと思います。

「内部監査」というと、現場を回って隅々までチェックして、間違いを指摘するようなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。

監査を受ける立場の方たちからすると、業務を知らない素人が土足で上がり込んできて、「これ、できてないよ」「あれ、できてないよ」って指摘をして帰ると思われているかもしれません。

でも私はこう思うんです。

内部監査の役割は、ただ間違いを指摘することではないと。

本来の目的は、指摘によって、一緒に働いている会社や現場をもっと良くしていくことなんですから。

ただ、監査の難しいところは、人によって考え方もやり方もそれぞれなところ。例えば警察のように取り締まる存在なのか、ただ意見を述べるだけの評論家なのか、注意を促す風紀委員なのか、でも何かそれらは違う気がする──。

じゃあ、自分はどんな監査員になるべきなのか──。

一番しっくりくる表現が「真っ当な阪神タイガースのファン」でした。

野球に詳しくはないんですが、「いつも応援には愛があって、愛ゆえに時に厳しいことも言う」という阪神ファンのイメージが、内部監査としてのスタンスにも通じるものがあると思ったんです。

会社や現場に対する愛があること。
変えるべきことがあれば、真摯に伝えること。
同じ方向を向いて、会社をよくしていくこと。

そんな思いで、当時は「監査部は、みなさんのガバナンスパートナーです」と伝えていました。

自分にとっての“ありたい姿”が明確になってからは、監査の仕事がどんどん面白くなっていきました。
 

■55歳で初めての転職。ギャップを埋めながら、会社を良くしていく


監査として年次を重ねるうちに、ついに役職定年の55歳まであと1年、54歳を迎えました。

内部監査部門のNo.2のようなポジションで最後まで働いたので、自分としては勤め上げて“卒業させてもらった”という感覚でした。

年齢的にはそこでリタイアしたり、少し休んだりする人もいるかと思いますが、私は子どもがまだ中学生だったこともあり、転職して働くことに決めました。

そんな時に出会ったのがシナネンホールディングスです。

前職の会社の事業と被らない業界だったことと、人々の暮らしにおいて欠かせない「エネルギー」を扱っているところに魅力を感じました。当時、監査機能を強化していたタイミングだったことも相まって、入社しました。

しかし、32年間一つの会社の中だけで生きてきて、仕事内容はこれまでと同じ監査業務であっても、企業風土の違いや社内用語など、戸惑うことが多かったのも事実です。

エネルギー業界は全くの初めて。

内部監査では、現場の課題を見つけ出すためにも実情を把握し同じ目線で話す必要があるのですが、業務についてまだ理解しきれていない部分も多く、皆さんに教えていただきながら勉強中です。

監査を通して客観的に思ったのは、「人が良くて真面目な会社」という印象でした。

一方で、その人柄からか、さまざまな規程について「守らなくてはいけないから守る」と思ってしまっているような感覚もありました。

規程は、業務を複雑にするためにあるわけではなく、安心して業務を進められるようにするためのもの

そんな意識を高めていけたら、もっと業務が楽になるかもしれないし、さらに成長につながるかもしれない。そんな可能性を感じています。

前職のとき、社長にこう言われたことがあります。

「監査部が監査をしてくれているから、安心して眠れている」と。 

改善すべきところがあれば助言するし、うまくいっていたら問題ありませんって背中を押す。この会社でも、そういう存在になりたいと思っています。
 
 

■会社に愛があるか。一人ひとりの思いが会社の未来をつくる

 
入社した企業で、最後まで働く。

この意識は、昭和的なんだろうなって思います。

希望しない異動を何度も経験してまで、同じ会社に残り続けるなんて、若い方には信じられないかもしれませんね(笑)

私も、同じ会社に居続けることをただ推奨するつもりはありません

経験上、言えるのは、少しでも、会社なり、仕事に対して愛着があるなら、流れに身を任せて、やりがいを探しみるのも一つということです。 

好きこそ物の上手なれ」というのは、ある意味で真理だと思うんですよね。

やっぱり、仕事が好きだったり、その会社のことが好きであったほうが、頑張ろうという気持ちは自然と沸いてくるはず。

監査の仕事に関して言えば、究極は外注することだってできるわけです。

外注コストとの兼ね合いは置いておけば、多くの仕事にも同じことが言えるかもしれませんね。

それでも“内部”で“社員がやる”ことにこだわるのは、「この会社のために何ができるか」という意識が重要だからなんじゃないかと思います。

もちろん、外注でもクラアントに寄り添ってくれる方はいますが、会社に愛があって、会社を良くしたいっていう、社内の人間にこそ生まれる思いはあるように感じます。

令和の時代に、こんな私の価値観や経験は合っていないかもしれません。

ですが、こういう経験、考えをきちんと伝えていくことが、今の私にできることでもあるんじゃないかと思うんです。

次の世代の方々にどう思ってもらってもいいんです。「自分はこうはなりたくない」っていう方だっているでしょう。

大事なのは、こういうオジサンの話を聞いて、自分は自身のキャリアをどうしたいか、本気で考えてくれること

そうして後輩たちにどんどん自分を追い抜いていってほしい。

いま、私のキャリアを知ったうえで、「自分はこういうキャリアを築きたい!」と思えた方がいてくださったなら、それが一番です。

これからを担う若い方々に対して、自分なりのキャリアを歩めるよう背中を押すことが、年長者が担うべき役割なんじゃないかなと思っています。

(終)


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